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住宅に使用される木材

●構造材(こうぞうざい)●

○土台(どだい)

木造建築で土台という部材は、建築物全体の荷重を支え、その荷重を基礎から地盤面へ伝える役目をしています｡つまり、一軒の家屋の中で最も高い耐久性が要求される部材で、あわせて日本特有の高温多湿という気候風土から、耐水性、耐湿性、そして抗菌性をも求められます｡通常一般の木造住宅では、12�p×12�p(四寸角)といった規格寸法の用材が使用されます｡また、寺社建築や大規模な木造建築では、13.5�p×13.5�p(四寸五分角)や15�p×15�p(五寸角)など、それぞれの建築物の荷重に耐えられるよう設計や用材選定の段階でその寸法が決められます｡

○柱(はしら)

柱には、通柱(とおしばしら)、管柱(くだばしら)、間柱(まばしら)などがあります｡通柱は、一階と二階とを通して使う長い柱｡管柱は、土台から胴差し(どうさし)、胴差しから軒桁(のきげた)のように各階ごとの柱てす｡間柱は、柱という文字が使われていますが、壁の下地材としての役割を持ちます。
　また、柱として使用される主な樹種は、スギ、ヒノキなどで、その他に米松などの集成材があります。生産される地域によって樹種に違いがあるため、おのずと使用材にも変化があります。南九州では、スギが中心に使用されています。一般の木造住宅では、10.5�p×10.5�p(三寸五分角)、または12�p×12�p(四寸角)といった規格寸法が使用されます｡最近では木造三階建ても見られるようになりましたが、その場合の一階の柱の太さは、原則として13.5�p×13.5�p(四寸五分角)以上と規定されています｡その他、平家であっても21�p×21�p(七寸角)や30�p×30�p(尺角)といった太い柱が使用されることもあります｡なお現在は、耐震性を考慮し四寸角が主流になっています｡

【真壁工法と大壁工法】

○桁(けた)

外周平側の軸組で、柱の上部を連結している水平材を軒桁(のきげた)と呼び、小屋梁(こやばり)を受けて屋根の荷重を柱(はしら)に伝える役割をします｡ただし、他の部材でもいえるように一つの定義としての名称でしかなく、その目的や用途によって呼び名が変わります｡
建物の構造によって部材の寸法が変わるため一概にはいえませんが、通常10.5�p×10.5�p、12�p×12�p以上が使われています｡スギ、ベイマツなどが一般的ですが、外部から見えるようにする場合などは、節の無い木材を使う時もあります｡

○母屋(もや)

母屋は、小屋組みを構成する部材の一つで、屋根を上から見たとき垂木(たるき)と直角に交わるように位置します。垂木は瓦(かわら)や野地板(のじいた)の重みを受け、母屋は垂木を支えながらその重みを受け、さらに束(つか)を通して自身の下に位置する部材へと荷重を逃がしていきます｡
部材の大きさは通常9�p×9�pや10.5�p×10.5�pで、スギやベイツガが多く使用されています｡構造材として建物の上部に位置しているため、全体として重みがかかっていないように思われますが、雨や風などの自然の力を受ける度合いは一番といえます｡そのカに対応できるよう、耐久性のある樹種を使うべきです。

○梁(はり)

梁には、ベイマツ、スギの角材や、松丸太、タイコおとしなどが使われます｡用材の種類や寸法などは、地域や建築単価などによって多少の違いがあります｡小屋組が和小屋の場合、屋根の重さが小屋東(こやつか)を通して集中的に小屋梁(こやばり)にかかるので、比較的大きな角材か松丸太、タイコおとしが使用されます｡また小屋組が洋小屋の場合、小屋梁のような曲がった部材は使用せず、ある程度の大きさの角材(陸梁：ろくばり)を使用します。

○筋違(すじかい)

土台や梁など他の構造材は建物の上からの荷重、つまり地盤面に対して垂直方向のカを受ける部材です｡屋根瓦や家具や住む人の重さを地盤に伝える役目をします｡構造材けに限らず後述の根太(ねだ)や大引(おおびき)など木造住宅の大半の用材は、この垂直荷重を伝え、またそれに耐えらるように使用されます｡
これに対し、風や地震など建物の横からのカ、つまり水平方向の荷重に対して、それを受ける部材がこの筋違(すじかい)と火打ち梁(ひうちばり)です｡

一般に「柱がたくさん建っているから丈夫だ｣とか、「梁が太いから丈夫だ｣といっていかにもそれが丈夫な住宅の基準であるかのように思われがちですが、確かに部材を大きくしたり太くすることは間違いではないのでずが、建物の受ける力は垂直荷重と水平荷重では全く別のものです｡いくら柱や梁を太くしても、筋違い疎かにすると安全で丈夫な住まいとはいえません｡
土台と同様に、耐久性が要求されます｡スギやヒノキなどの乾燥した用材を使用し、圧縮力に耐えられるよう幅は9�p以上、厚さは4.5�p以上の寸法を使うべきです｡

●下地材(したじざい)●

◆屋根下地材(やねしたじざい)◆

どんなに大きく内装が立派な家でも、雨漏りがしたのでは“家”とはいえません｡直接には瓦などの屋根聲き材が雨を受けるわけでずが、相手は水もの、どんなに小さな隙間でも容赦なく入り込んできます｡屋根は木材にとって天敵である”水”の進入を防ぎ、さらに瓦や雪の荷重に耐えられるように施工しなけれぱなりません｡木造住宅の屋根というと、すぐ”瓦”'と思われがちでずが、その瓦を支え下地となる部材も重要で決して疎かにできない部分です｡

○垂木(たるき)

垂木は、母屋(もや)の上に直交に掛け渡します｡間隔は30.3�p(一尺)、36.4�p(一尺二寸)または45.5�p(一尺五寸)とし、部材の大きさは4.5�p×4.5�pから9�p×4.5�pを使用するのが一般的です｡軒先を深く出すときや、屋根葺き材に瓦などの重いものを使用するときは荷重に耐えられるよう太いものを選びます｡樹林は通常スギ、ヒノキなどが使われます。

○野地板(のじいた)

野地板は、垂木の上に張る厚さ9�oから15�oの板で、スギ、ヒノキ、または耐水合板など様々なものが使われています。瓦や雪の荷重、風のカを平面的に分散させて受けているので、厚さは9�oでも十分耐えられますが、厚めの板を使うことにより屋根からの熱を防ぐことができます｡

○瓦桟(かわらさん)

瓦を屋根に掛けるための材料です｡寸法は地域によって様々で、18�o×15�o、18�o×18�o、21�o×15�o、24�o×18�o、30�o×15�oなどの大きさのものが使われていますが、そのなかでも18�o×18�oのものが主流を占めています｡一般に多く使われているのはスギ、その他にヒノキ、ベイマツなども使われます｡できるだけ耐久性のあるスギやヒノキのアカミの部分が最適といわれています。

○間柱(まばしら)

間柱とは、柱と柱の間に取り付けるものです｡柱は荷重がかかる構造材ですが、間柱は柱という字がついていますが直接荷重がかかるものではなく、むしろ壁の下地材としての役割をします｡
大壁工法では柱の寸法にあわせ、柱の大きさが10.55�p×10.5�p(三寸五分角)の時は、10.5�p巾を、12�p×12�p(四寸角)では、12�p巾の、いずれも厚さは通常2.7�pや3.0�pの規格材を使用します｡樹種としては、スギ、ヒノキ、ベイマツなど、最近では集成材などが使われるようになっています｡
真壁工法で使う間柱は、大壁の間柱とは寸法が異なります｡柱の太さが10.5�p×10.5�pの時は4.5�px3.6�pを、12�p×12�pでは5.5�p×4.5�pのものを使います｡つまり、桂が太くなればそれに伴い間柱も大きくなります｡

○貫(ぬき)

真壁で柱の中間に穴をあけ柱を横につなぎ、壁を支える目的で柱と直苗に通すものをいいます｡貫は、位置によって呼び名が違い、根がらみ貫(床下)、胴貫(窓、出八り口部)、内法貫(窓、出入り口や鴨居上)、この他天井のわきに使う天井貫などがあります｡樹種は、スギやヒノキが最も多く使われます｡寸法は通常9�p×1.3�pから10�p×1.5�pで、真壁が多い寺社建築や地方の純和風建築では、筋違(すじかい)を多用けずに貫で建物を強固なものにする目的で、これらより大きい寸法か使われます｡

○胴縁(どうぶち)

主に大壁の内装材や、外壁材の下地として使われます｡樹種は、スギやヒノキ、ベイマツなどなどを使います｡寸法は4.5�p×1.3�pから4.5�p×1.8�pが一般的です。

○床束(ゆかつか)

床束は、床全体の荷重を受け、大引(おおびき)の垂れを防ぐために立てられます｡人間でいえば足に当たる部材です｡床下収納庫や床下点検口を開けてみると、地盤面に束石(つかいし)を台座に床束が立てられています｡住宅の基礎部分が布基礎で施工されている場合は、通常束石を設置する箇所は突き固めます｡また、地震などの揺れから床束の倒れを防止する根がらみ(ねがらみ)という床下の筋違(すじかい)が使われます｡部材としては間接的に地盤面と接するわけですから、耐湿性のあるヒノキのアカミやなどが適材ですが、南九州においては、スギを用いています。最近では、金属製や樹脂製のものが主流となっています。

○大引(おおびき)

大引は、一階部分の根太(ねだ)、荒床板(あらゆかいた･畳を含む)を支えるものです。間隔は縦、横方向のいずれかに90�p(三尺)間隔に配置します｡寸法は、9�p×9�p以上とし、スギやヒノキ、ベイツガなどが多用されています｡

○荒床板(あらゆかいた)

荒床板は、和室の畳を敷くための部材です｡この部材がないと畳を敷いた上を歩くときに、フワフワして歩きづらくなり、また床下からの湿気を防ぐ役割もします｡通常は、厚さ12�oから15�oのものを使用します｡

○根太(ねだ)

根太は、一階部分と二階部分で使用する寸法が異なります｡一階根太は、床板(フロｰリング)等)、荒床(畳を含む)を支える部材で大引に対して直角方向に取り付けられます｡間隔は和室(畳の部屋)では45�p(一尺半)間隔以下、洋間(板張り)の部屋の場合では30�p(一尺)間隔以下とします｡部材の寸法は4.5�p×4.5�p以上とします｡二階根太は、二階床板を支えるものです｡一階床下とは若干違い、床束に対しては柱が、大引に対しては二階梁がそれに相当します｡二階梁に対して直角方向に取り付けられます｡二階梁や桁の端にのせ釘で止める方法と、根太掘り(ねだぽり)をしてそこにはめ込み、釘で止める方法があります｡地震に対しては、根太掘りをしたほうが有効です｡通常、間隔は30�p(一尺)以下、部材の大きさは10.5�p×4.5�p以上とします｡

○天井板(てんじょういた)

天井の役割は、床や壁とともに室内を区切りそこに一つの空間を生み出すことです｡区切ることにより、小屋組みや二階の床組みをきれいに隠し、また音、熱などを遮断し、上から落ちるごみを防ぐといった実用的な面での役割もあります｡なお建築基準法での住宅の天井高さは平均2.lm以上と規定されています｡

また、一般の住宅で使われる柱の長さは、経済的な面から既製品として市場に流通している長さ3mの柱を使うことが普通です｡そうすると、設計上部屋の天井高は2.4mから2.5mになります｡これ以上高くしたいときは、天井板を貼らずに梁や桁を見せるようにしたり(表し工法)、あるいは柱そのものの長さを長くしたりします｡構造材である梁や桁を見せるとなると、それらを加工する際にカンナで削ったりする“見せるための加工”が必要になります。後者の場合、柱の長さが3.3mから3.6mのものを使うと、天井高は2.7m前後まで高くすることができます｡

天井の形状には、一般的には平(水平)天井がほとんどです｡重厚さのある格天井(ごうてんじよう)、軽快さのある綱代天井(あじろてんじよう)、その中間的な竿縁天井(さおぶちてんじょう)があります｡竿縁天井は、古くは和室天井の典型で、木や竹を竿に使います｡その他に、数寄屋建築に多く変化の楽しさが特徴の舟底天井(ふなぞこてんじよう)なども使われます｡和室の天井は、茶室の影響もあって変化に富んでいますが、畳に寝た場合は見上げることになるので、特に材料や形にこだわっていることもあります。

【格天井】	【網代天井】
【竿縁天井】	【船底天井】

◆和室造作材(わしつぞうさくざい)◆

○敷居(しきい)

敷居は、大きく分けて出入口敷居と窓敷居に区別できます｡通営は2本の溝やレｰルをつけます｡和室と洋間の間などにドアをつけたりした場合は、無目敷居(むめしきい：溝を付けない敷居)が、片引き戸の場合は、一筋敷居(ひとずじしきい：溝が１本だけの敷居)を取り付けます。
寸法は、基本的に幅は柱の太さと同じで、厚み(背)は畳の厚さと同じにします｡また、敷居の上端(うわば：表面)は木表(きおもて)、もしくは柾目(まさめ)となるように取り付けます｡なお、４枚引き戸の場合、敷居と鴨居の溝を４本、３枚引き戸の場合は３本とすれば開口面積を広くとることができます｡

○畳寄せ(たたみよせ)

建具の入るところには敷居と鴨居が必要ですが、壁の部分には必要ありません｡しかし和室を構成する上で、敷居と同じ位置に装飾的な部材が無いと畳と壁の間に隙間ができてバランスがとれません｡この部材が畳寄せです｡床が畳以外の場合は、雑巾摺り(ぞうきんずり)と呼びます。
また、和室で掃除機をかけるときに塗り壁を傷つけないようにするには、当然のことですが、畳よりも上端が高くなるように取り付けます。

○鴨居(かもい)

鴨居は、上部の小壁(こかべ)や欄間(らんま)を支えながら、敷居と一対になって建具の枠となるものです｡溝の無いものを無目鴨居(むめかもい)、片引き戸など溝が１本の場合は、一筋鴨居(ひとずじかもい)と呼びます｡鴨居の下端(下面)を木表とします｡畳寄せと同じく、建具のない壁面に鴨居と同じ位置に取り付ける部材を付け鴨居(つけかもい)といいます｡高さは鴨居と同じ、幅は鴨居の半分程度です｡通常4.5�p×4�p、5.5�p×4.5�p程度が用いられます｡これは内法長押を付ける場合、必ず取り付けます｡数寄屋風の和室には長押が無いため付け鴨居も設けることはありません。また、簡素な和室には付け鴨居のみを取り付ける場合もあります。

○差し敷居、差し鴨居(さししきい、さしかもい)

伝統的な木造軸組工法住宅において、農家住宅に多く見ることができた「田の字」型というタイフや、豪雪地域に多く用いられる構造材兼造作材です｡これは柱間が九尺(2.7m)から三間(5.4m)程度の間に用いられる背(高さ)が七寸(21�p)〜二尺(60�p)程度のもので、差し敷居は敷居＋土台、差し鴨居は、桁･胴差し＋鴨居の役割を果たします｡かつてはこの２つの材料が頻繁に使われ、真壁構造の軸組を更に強固なものにしていました｡　また、これらは構造面だげでなく造形的にも変化をつけることができ、和室、洋室を問わず現代的な感覚を演出することもできます｡

○廻り縁(まわりぶち)

廻り縁は、部屋の壁周囲に、天井に沿って取り付けられる見切り材のことです｡通常一段で取り付けますが、８帖間以上もしくは天井の高さが270�p(九尺)以上の場合には、廻り縁を二段にして取り付けた方が部屋全体のバランスが良くなります｡
一段廻り縁の標準的な寸法は、背(厚み)を柱幅の40〜45%として、柱面より1.5�p〜2�p室内に出します｡二段にした場合、上縁を前述のようにし、下縁を一回り小さくすると部屋がスッキリと仕上がります｡また、下縁は天井長押ともいい、この場合には背を柱幅の60%程度にすると、部屋に重厚な雰囲気を醸し出すことができます｡

○長押(なげし)

長押は、元々構造材でしたが、時代と共に室内装飾材へと変化してきました｡用いられる位置により様々な種類がありましたが、今日ではほとんど内法長押(うちのりなげし：出入り口や窓の上部に鴨居に接して設けられているもの)のことをいいます｡長押を取り付けることにより、空間が格式張て演出されます｡ この他に、蟻壁長押(ありかべなげし：天井の高さが比較的高い大広間等で用いられる)、天井長押(天井廻り縁の下部に設けられる、廻り縁の下縁のこと｡重厚な雰囲気を演出します)があります｡書院造りの主要な部屋の内部には、長押が二段(内法と蟻壁)に巡らされ、座敷の格式を示す指標になっていました｡また、茶室などの格式を嫌う室内では、一般に長押を付けることはしません｡

　

◆洋室造作材(ようしつぞうさくざい)◆

壁材と床材という異なる材料が接する部分の見切り材を「巾木(はばき)」と呼びます｡そして天井と壁の仕上げ部分が取り合う時の見切り材を「廻り縁(まわりぶち)」、窓と壁の見切り材を「窓枠(まどわく)」といいます｡巾木、廻り縁、窓枠ともに施工方法は部屋の意匠により様々な方法があります｡材質としては、本来は無垢材が良いのですが、最近ではコスト面などから合板やＭＤＦ材(中質繊維板)などを下地にして、塩化ビニールなどの特殊シートを貼り付けた既製建材を使用することが多いようです｡

このような既製建材を使う利点は、室内のドアやクローゼット、窓枠などにも同じような特殊シートを貼った既製品を使用することにより、トータルコｰディネートという点で、色合いのバランプに統一感をもたせることができます｡また、大壁がほとんどの洋間では、部材自体が小さい既製建材を使うことにより、家具との隙間を小さくできるといった点も上げられます｡そしてなにより、部材加工期の短縮が図られます｡

一方で欠点もあります｡巾木は見切り材としての役目に加え、掃除の際に壁を帰除用具による汚れや傷から保護する役目を持っています｡しかし、既製建材は傷付きやすく水に弱いという欠点を持つために、この保護するという役目を充分に果たせないことがあります｡貼ってあるシートが破れたりすると、修復が難しいためその部分を丸々取り替えなければなりません｡また、水に弱いために湿気の多い場所では、表面のシートが剥がれやずくなったりもします｡その点無垢材の堅い木を使用すれば、多少の傷も塗装などで簡単に直せます｡

◆木質床材(もくしつゆかざい)◆

「フロアは冷たい」とよくいわれます｡その場合、価格的に少々割高になりますが、無垢の縁甲板やヒノキなどの集成材を使うと「冷たい」問題は緩和されます｡特に女性が立ち仕事をする台所や、素足になる脱衣所などに使用すると効果は歴然です｡
木質の床とよく比較されるのがカーペットです｡肌触りがよく、音が静かなどの長所がありますが、カーペット敷きの部屋は、フローリングの部屋に比べてダニが3倍も多くいたという研究結果があります｡カーペット敷きの部屋は人間のフケ、髪の毛などダニのエサになるものがたくさんあり、掃除も簡単に出来ないためダニの巣になってしまいます｡それに比べて木の床は、掃除がしやすくほこりがたまらないため、ダニの発生が少なくります｡

また、木質の床を二階に使用する時は、下階への発音性を防ぎまた遮音性を高めるためにも、遮音シートの使用や合板を下張りするなど、充分に遮音対策を施すことです。

○縁甲板(えんこういた)

主にヒノキやマツを素材とした和風住宅の縁側などによく使われている床材です。素材である木材そのものの木目や感触が楽しめる反面、無垢の木材ゆえ、直射日光があたる南側の縁側などに使用すると日焼けし、収縮することもあります｡

○フローリングボード

ブナ、ナラなどの硬い木を乾燥させて加工した床材をいいます｡居間や客間などに多く使われ、部屋全体が洋風に仕上がります｡

○コルクフロア

コルクガシから採れるコルクに表面をウレタン樹脂加工したものです｡体積の約半分が空気のコルクは、樹脂の中に無数の独立した気泡があり、この空気層が熱を蓄え音を吸収します｡このようにコルクは断熱性能と吸音性能を備え、素足で歩いても冷たく感じません。

○集成フローリング

集成材を床材用に加工したものです｡最近、洋風なデザインが好まれるためか台所、廊下、洗面所など幅広い用途に使われ始めました｡

○複合縁甲板、複合フローリング

最も多く使用されている床材で、耐水合板や集成材の上に、スライスした単板や木目を印刷したものを貼り付け、表面を塗装し加工したものです｡収縮や反りは少ないのですが、耐用年数は無垢材の方が勝ります｡

◆木質内装材(もくしつないそうざい)◆

「高温多湿」という独特の風土の日本では、避けては通れない問題です｡まず、壁には調湿機能がある木材を使用します｡換気に気をつけ、室内に湿気が残らないようにします｡押入はスノコをひき空気層を設け、天気のよい日は開けておきましょう｡つまり「風の通り道」をつくってあげることが重要です｡

◆階段(かいだん)◆

今さら説明するまでもなく、上階と下階とを行き来するための段のついた通路のことです｡ここでは、あえて造作材の頁で記載していますが、階段は法律上「主要構造部」と呼ばれ、建築物の重要な構造材として取り扱われます｡それは階段が”踏み外す”、”落下”という住宅の中で最も危険性を含んだ場所であるためです｡浴室の”転倒”と合わせて、設計者が安全性という点で最も気をくばり、住む人が安全かつ容易に昇り降りできるよう設計するところです｡実際に足を掛け踏み上がる板を「段板(だんいた)」、その爪先にある段板と垂直の板を「蹴込板(けこみいた)」、そして段板の両脇にありそれを支える板を「ささらけた」と呼びます｡

このように安全性が要求される構造材であるべきなのですが、最近は住宅事情の面からもその意匠上の見栄えの良い、いわゆる「かっこいい階段」という条件が最優先され、使用される部材の強度や安全性については関心が薄いようです｡階段の規格寸法は、ある程度法律で定められています｡規準となるのは、その住宅に使用される柱の長さ(階高)と階段室の柱の間隔(階段幅)によります｡このとき、構造上注意すべき点は「段板の厚さ」と「蹴上げの高さ」です｡

通常、昨今の住宅事情などから階段室の幅は、柱の芯々で91�p(三尺)幅が主流を占めているようですが、建築面積に余裕がある場合などには、121.2�p(四尺)や136.5�p(四尺五寸)といった幅の広い階段も見受けられます｡この三尺幅の段板の厚さは仕上がり寸法で3.0�p(一寸)から3.6�p(一寸二分)、四尺幅で4.5�p(一寸五分)以上が必要とされます。これ以下の厚さでは長年使用しているいちに、人の移動に耐えられなくなる可能性があります｡つまり、階段室の幅が広くなるにつれて、段板も厚くしなければならないということです｡ 蹴上げの高さは通常21�p(七寸)を基準としますが、足の不自由な方や年配の方が住まわれる住宅ではこれより低めに設定します｡さらにこの場合、手すりなどをつけて安全性を高めることも必要です｡

◆床の間(とこのま)◆

現在の床の間と同じ機能、構造のものは室町鎌倉時代代における「茶室建築」が始まりといわれています。部屋の中にものを飾る、花を生ける、香を炊くといった「茶の湯の世界」から要求されたようです｡当時の建築を見ると床の間の形式は畳敷きで、違棚や押板などはケアキを使用するのが定法でした｡

床の間が一般に普及するのは江戸時代中期以降になってからです。質素倹約を旨とする徳川幕府は、時代を通してしばしば倹約令を出し、もちろん住宅の贅沢も厳しく規制されました｡藩によっては「百姓、郷中、町方共に」床の間、長押、しいては天井板まで”無用の贅沢”としたところもあったようです｡

しかし、旅人の宿である「旅籠(はたご)」にはこれらのものは許されました。それは床の間がものを飾るために必要なのではなく、端的に「部屋の格式を示す」ものになったためと思われます｡床の間のある部屋は立派な部屋で、無い部屋は次の間など一段格の低い部屋と、はっきりとした格差を持たせたようです｡つまり床の間は本来の機能から離れ、武家政治のもとで格式的なものへとなっていきました。床の間を設けたいという願望をだれもが抱きながらも、士農工商の四民差別を基本とする体制下では、ごく限られた上層住居の施設として造られました｡したがって、床の間を設けるにあたっては、構成や材料の吟味にかなりのカを注いだものと考えられます｡

ところが、現代の日本人の生活様式の洋風化と最近の住宅事情から、床の間の機能はさらに変化しました｡電気掃除機が置いてあったり、子供のオモチャ置き場であったり……｡　残念なことに「飾る」ところでも｢格式｣の場所でもなくなってしまったようです｡

◆外壁材(がいへきざい)◆

外壁材には、次のような条件が必要です。

1. 耐候性、耐久性がある｡(丈夫で長持ち)
2. 耐水性が良い｡(吸水･透水しない)
3. 防火性が良い｡(燃えにくく、有毒ガスが出ない｡防火・準防火地域は不燃材)
4. 耐衝撃性がある｡(壊れにくい)
5. 耐熱性が良い｡(室内温度を逃がさない)
6. 遮音性がある｡(騒音を通さない)
7. 耐汚染性がある｡(汚れにくい･清掃しやすい)
8. その他(施工性、経済性、快適性、美観など)

以上の点があげられます｡特に５、６は外壁仕上げ材だけでは完全ではありません｡下地材にも考慮する必要があります｡

現在、外壁に使われている主な材料をあげます｡

材　料	特　徴
木材	昨今の環境問題などから使用が増えてきています。暖かさや親しみを感じさせてくれますが、付上げの塗料にも注意が必要です｡
モルタル	セメントと砂を混ぜて、水を加えて練ったものです｡防火性、遮音性、強度に優れ、価格も経済的｡しかし、亀裂が入った場合、雨水が内部に浸入するおそれがあります。
漆喰 (しっくい)	消石灰に、すさ・砂・のりなどを濃ぜて水練りしたもの｡日本の伝統的な壁材料です｡最近では珪藻士(けいそうど)を使い、身体に優しい素材として注目されています｡
金属系サイディング	軽くて防水性があり施工がしやすいという利点があります。断熱性や防火性を高めるため、断熱性や石膏ボードの裏打ちがされています。
窯業系サイディング	押出セメント成型品のことで、以前は石綿も含まれていました(現在はノンアフベストがほとんどです)｡防火性、耐水性、耐久性に優れています｡重く、衝撃性や断熱性に劣ります。施工もやや難しいといえます｡
ALC版 (発砲コンクリート版)	コンクリートに金属粉や発泡剤を入れて小さな泡を発生さ、高温高圧で蒸気養生させた軽量コンクリート板のことです｡軽量、耐火、耐久、吸音性に優れ、切断、穴開けなどの加工が簡単です｡しかし、曲げ強度が弱く、吸水性が高いため、防水性の吹き付け塗料で表面を仕上げなければなりません｡
タイル	色彩が美しく汚れが目立たず、手入れが簡単です。欠点は壊れやもいことと重いことです｡

◆軒裏(のきうら)◆

≪和風の軒裏≫
和風の軒裏は、寺社建築の様式を簡素化したもので、細かい様式を上げると数多くの工法があります｡ここでは代表的な「出し桁化粧(だしげたけしょう)と、「軒先化粧(のきさきけしょう)」をとりあげまず｡ここでいう「化粧」とは木材をカンナで仕上げ、見栄えを良くすることをいいます｡
出し化粧は、軒先化粧より材料、工法とも贅を凝らしたもので、地方の農家建築などによく用いらる工法です｡軒先を深めに出し、軒裏に幅の広いスギ板を張って垂木を見せます｡縦に整然と並んだ垂木の線と、幾何学模様のスギ板の木目が作る空間は、木造建築の基本と趣を表現してくれます｡最近は残念なことに住宅の洋風化と法律の規制などにより、その姿は都市部などでは殆ど見ることはできなくなりました｡

≪洋風の軒裏≫
軒裏の天井が木材で仕上げられているのではなく、不燃材で仕上げ塗装してあるものです。都市部や住宅地のほとんどの住宅はこの工法です｡「燃えにくい」ということが大きな理由ですが、前項の和風より経済的で、工期が短いことも普及した理由です｡
工法上、屋根裏の空間が密封されるため、日差しにより熱せられた屋根裏の熱気を外に逃がすためにも、軒裏に換気口を付けることをお勧めします｡特に真夏の日差しを受けた屋根瓦がもつ熱は我々が想像する以上で、当然その熱で屋根裏はかなりの温度にこなります。その熱気を逃すことにより、室内を過ごしやすくするためです｡

◆集成材(しゅうせいざい)◆

集成材とは、厚さ２�pから３�pのひき板や小角材などを、繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ、幅、厚さの方向に接着したものです｡1893年ドイツで開発された”輸入材”です｡日本では、1951年に東京四谷の森林記念館で使用されたものが、本格的な構造用集成材の使用開始とされています｡このときはアメリカの技術導入により、杉の円弧状のアｰチ材が作られました｡

集成材の特徴は、木材特有の割れ、反り、ねじれなどがほとんどなく、普通の木材より強度、耐久性があり性能が安定しており、無垢材では作りにくい大きな断面のものや、非常に長いものか生産でき、湾曲材などが容易に生産できます｡
このように集成材は、無垢材にない優れた特長を持っています｡これは､集成材の原料である挽き板が各々薄くてムラなく乾燥できること、そしてあらかじめ割れ、腐れなどを除いた材料を使用するためです。

集成材は大きく分けると「造作用集成材」と「構造用集成材」の２つに区分することができます｡日本農林規格(JAS規格)では、次のように区分しています｡

≪造作用集成材≫
挽き板を集成し、そのまま素地を表したものをいいます｡階段、テーブル、カウンター、手摺りなど、あまり荷重がかからない内部造作に用いられます｡

≪化粧貼り造作用集成材≫
造作用集成材の表面に、無垢材の美しさをだす目的で天然木の薄板を貼り付けたものです｡主に鴨居(かもい)、敷居(しきい)、長押(なげし)などの和室内部造作に使用されます｡

≪化粧貼り構造用集成材≫
在来軸組構法の柱として用いられるもので、スギやヒノキの天然木の薄板をはり付けたものをいいます。和室の真壁の柱として使用され、荷重がかかる構造材と美観が要求される造作材双方の役割を持ちます｡

≪構造用集成材≫
所要の耐力を目的としてつくられたもので柱、梁、桁、湾曲アーチ材など、構造物の耐力部材として使われます｡